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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)939号 判決 1949年6月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人原野一美上告趣意は末尾に添えた別紙記載の通りである。

(一)上告論旨第一點は、被告人は品物を犯罪の現場から持ち出さずすなわち自己の支配下に置いたと言い得ない状態で逮捕されたのであって、まだ他人の財物を強取したと言いえない強盗未遂であるのに、原判決がそれを既遂として處斷したのは、法律の適用を誤ったものだ、というのである。しかし原審が證據によって認定した事実を記録に當って見ると。被告人は共犯者等と共に被害會社の事務所に押入り、居合わせた男女事務員の全部を縛って全然抵抗し得ず奪われた物を取返し得ない状態に置き洋服類は着込み、その他の物は荷造りして持ち出すばかりにしたところを、警察隊に踏み込まれて捕縛されたのであって、上告論旨が通説なりとするいわゆる「取得説」から言って、既に物の支配を取得したと言い得るのであり、竊盗罪についてではあるが、盗品が犯行の場所から持出される前に既遂を認定した判例が大審院以來繰返されているのであって(大正一二年(れ)三六一號同年四月九日大審院第二刑事部判決、大正一二年(れ)九二四號同年七月三日大審院第一刑事部判決、昭和二三年(れ)六七五號同年一〇月二三日最高裁判所第二小法廷判決、昭和二三年(れ)八三〇號同年一二月四日同第二小法廷判決、昭和二三年(れ)一一三二號同年一二月二七日同第一小法廷判決、昭和二三年(れ)一五一三號同二四年二月八日同第二小法廷判決)強盗罪についてもこの點は同様であり、論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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